自己破産をすると自動車は処分されてしまう?

自己破産しても、車を手放さずに済む?

車がなくなってしまうと、日常生活に支障をきたす場合もあるので、自己破産をする際に、自分が所有している車を手放さずに済むのか、自己破産した後でも購入することができるのか、心配されている方が多くいらっしゃいます。

自己破産すると所有している車がどうなるかを、ローンが残っている場合と残っていない場合に分けて説明します。車の時価が20万円以下であると車を残せることもあるので、自己破産後に車がどうなるかきちんと知った上で、自己破産を行なうか考えていきましょう。もしも読みすすめて分からないことがあれば、弁護士にお気軽にご相談ください。

自己破産時に所有している車はどうなるか

自己破産をした場合、債務が免除される代わりに、所持している財産は、原則、処分しなければなりませんが、自由財産といって、自己破産しても処分の対象外になる財産が認められています。自己破産において処分しなければならないのは自由財産に該当しない財産ということになりますが、自動車は、原則として自由財産に該当しません。

ローンの残っていない自動車は、自己破産をすると、その価値によっては、処分し、現金化したうえで、債権者に配当しなければいけません。

自動車ローンの支払い状況によって処分が異なる

自己破産時に所有している車は、自動車ローンの支払いが終わっている場合と、支払いが残っている場合とで、処分の条件が異なります。

自動車ローンが残っていない場合

自動車ローンが残っていない場合には、自動車の時価が20万円以上の場合、原則として自動車は処分されてしまいます。

また、自動車の法定耐用年数である6年を超えている場合は、査定を取らなくても残せる場合があります。ただし、外車や人気車種によっては、裁判所から査定の提出を指示される可能性がありますので、注意が必要です。

自動車ローンが残っている場合

自動車ローンが残っている場合には、ローン会社との契約によりローンを完済するまでの間は、自動車の所有権がローン会社に留保されていることが通常です。そのような場合、自動車の時価に関わらず、ローン会社に自動車を引き揚げられてしまうのが原則です。ローン会社に車を回収されるのは、自己破産の手続きを弁護士に依頼したタイミングです。

自己破産後、所有している車はどうなるか?
ローンが残っている ローン会社に引き揚げられてしまう。
ローンが残っていない。かつ、車の査定額が20万円以上の場合 裁判手続きのなかで処分されてしまう。
ローンが残っていない。かつ、車の査定額が20万円未満の場合 処分されず、手元に残すことができる。

自動車ローンを誰かに支払ってもらった場合は?

親や子供にお願いして、ローンを一括で支払ってしまえば、ローン会社の所有権留保は解除され、法的には問題なく、車を残すことができます。これを第三者弁済といいます。

ただし、その時点で所有者はあなたとなってしまうため、上で見たローンが残っていない場合と同様に、車の時価が20万円以上の場合、結局、自動車を手放すことになってしまいますので、事前に査定をしておくなど注意が必要です。

また、支払ってもらった方を債権者として申告する必要がある場合がありますので、破産手続きを検討されていて、誰かに支払ってもらう場合には、事前に弁護士とよく相談することをお勧めします。

配偶者や家族名義の自動車はどうなる?

自己破産手続では、破産者本人の名義の車が処分の対象になります。そのため、配偶者や、子供、親など家族の一員であっても、裁判所から本人以外の名義の車を処分されるようなことはありません。仮に、妻名義の車を夫が利用していたとしても、夫の自己破産手続で、妻名義の車が処分されるようなことはありません。

妻名義の車なら処分されないからといって、自己破産前に車を自分名義から他の家族の名義に変える行為は、資産隠しに該当する可能性あり、自己破産が認められなくなる可能性があるので、絶対に行わないでください。

通院や介護でどうしても車が必要な場合

車の価値が20万円以上で、自由財産として認められない場合でも、通院や介護で、自動車を使用するやむを得ない理由がある場合、裁判所の判断によっては車を手元に残せる場合があります。ただし、仕事で必要という理由では自動車は手元に残すことはできません。

自己破産後、車を購入できるか

自己破産する前と同じようにローンを組んで車を購入できるわけではありません。 自己破産をしたという情報は、信用情報機関に事故情報として5~10年の間は登録されるため、その期間は審査が通らず、自動車ローンを組むことができません。そのため、自己破産してから5~10年程度は、車の購入はローンではなく、現金払いで行なわなければなりません。

自己破産前にやってはいけないこと

自動車ローンだけ一括返済をする

自己破産を行う場合は、借金が残っている自動車については、債権者に引揚されてしまいます。それを避けるために、複数の債権者がいるにもかかわらず、自己破産の直前に一括返済することは、 特定の借金だけを返済する「偏頗弁済(へんぱべんさい)」にあたり、自己破産が認められない可能性があります。

また、完済してしまうことにより、その自動車の資産価値が20万円以上となった場合、その自動車は資産としてみなされ、処分して、債権者に配当する必要があります。

自動車ローンだけを隠す

車を残したいからと言って、自動車ローンだけを申告しないことはしないでください。自己破産をするにあたって、虚偽の報告をするということは、結果的に詐欺行為とみなされることもあるので、隠さずに伝えるようにしてください。

財産を隠すことは、詐欺破産罪にあたります

詐欺破産罪とは、債権者を害する目的で、財産を不正に処分したり隠したりすることです。破産手続き開始前後問わず、これらの行為は詐欺破産罪として処罰の対象になります。「詐欺破産罪」になると、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、場合によっては、これらの両方が科されることがあります。

自己破産しても免許は失効されません

自己破産をした場合、運転免許が失効されるか気にされる方もいらっしゃいますが、運転免許を失効することはなく、車に乗ること自体は制限を受けることはありません。

自己破産してもレンタカーを借りる事はできます

自己破産後に車が必要になったとき、レンタカーを借りて運転することも可能です。ただし、自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が5~10年残るため、クレジットカードは作成することはできないので、レンタカーを借りる際は、現金払いを利用することになります。

また、一定期間、月々決まった使用料金で車を利用できるカーリースは、車を借用するにあたって、ローンを組むのと同様、信用情報機関への照会が必要になるため、事故情報が残っている場合、リース契約をすることはできないため、サービスを利用することは難しいでしょう。

どうしても車を残したい場合は、自己破産以外の債務整理の検討を

どうしても車を手放したくない、という方は、自己破産以外の解決方法を検討することをお勧めします。

債務整理の3つの手続「任意整理」「自己破産」「個人再生」のうち、最も車を残しやすい方法が「任意整理」です。

全ての返済義務が免除される自己破産に対して、任意整理は弁護士が貸金業者と交渉して債務額全体を減らしたり、月々の返済額を減らすことで、現在の支払いよりも負担を軽くする手続きです。

任意整理の場合は、基本的に財産を処分されることはないので、自動車ローンが残っていなければ、任意整理しても車を処分されることはありません。

また、任意整理では、整理する対象を自由に選択することができるため、もし、自動車ローンの支払いが残っている場合、自動車ローンを任意整理の対象から外すことで、車を処分せずに残すことができます。ただし、自動車ローンを任意整理の対象としないことで、返済を続けることになるので、継続して返済できるかどうか、シミュレーションしておく必要があります。

自己破産をすると自動車は処分される? まとめ

  • 自己破産で自動車は処分される?
    ローンが残っている場合は、ローン会社に引き揚げられてしまいます。ローンが残っていない場合でも、車の査定額が20万円以上の場合 裁判手続きのなかで処分されてしまいます。ローンが残っておらず、車の査定額が20万円未満の場合は、手元に残すことができる。
  • 仕事でどうしても必要な場合、車を残すことはできる?
    仕事で必要という理由では自動車は手元に残すことはできません。ただ、通院や介護で、自動車を使用するやむを得ない理由がある場合、裁判所の判断によっては車を手元に残せる場合があります。
  • 自己破産後、車を購入することはできますか?
    自己破産する前と同じようにローンを組んで車を購入できません。 自己破産してから5〜10年は信用機関に事故情報が載るため、自動車ローンを組むことができません。その間は、車の購入はローンではなく、現金払いで行なわなければなりません。
代表弁護士中原俊明
代表弁護士 中原俊明 (東京弁護士会所属)
  • 1954年 東京都出身
  • 1978年 中央大学法学部卒業
  • 1987年 弁護士登録(登録番号:20255)
  • 2008年 法律事務所ホームワン開所

債務整理、特に破産事件を数多く取り扱ってきた。これまでに破産申立を行なった件数は6000件以上。依頼人の利益を考えることを第一に、法律サービスをもっと身近なものにしていくことを目指す。東京弁護士会春秋会の一員として編集に携わった書籍に『実践 訴訟戦術-弁護士はみんな悩んでいる-』などがある。

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