自己破産を検討されている方で、弁護士か司法書士どちらに依頼するか迷われている方や、そもそも弁護士と司法書士に違いがあるのかわからないと思われている方もいるかもしれません。中には「弁護士に頼むと、費用が高そう」というイメージを持たれて、弁護士に相談しづらいと感じている方もいるかもしれません。
ここでは、そうした悩みや疑問に答えるために、自己破産手続きで、弁護士と司法書士どちらに依頼するかで、どのような違いがあるかを説明したいと思います。
自己破産における弁護士と司法書士の最も大きな違いは、弁護士が代理人になれるのに対し、司法書士は代理人になれないことです。弁護士に頼めば、代理人申立てになり、司法書士に頼めば、本人申立てになります。
弁護士が行なう代理人申立ての場合は、本人が裁判所に出頭せず、書面審理のみで進行するケースがあります。本人が裁判所に出頭しなくてはいけない場合も、代理人である弁護士が同行できます。一方で、司法書士に頼む場合は、本人が裁判所に行かなくてはなりませんし、司法書士は代理人でないため、裁判所に同行することはできません。
このように、司法書士は、書類作成人として申立書等の作成を代行するのみで、依頼者に代わって意見を述べることはできません。弁護士は、代理人として意見を述べたり、様々な手続きを依頼者に代わって行なうことができます。
では、具体的に本人が裁判所に出頭するのは、どのような手続きなのでしょうか?
東京地裁の同時廃止の場合は、次のように手続きが進みます。
申立て→受理→破産審尋→開始決定→免責審尋→免責決定
司法書士に依頼すると、依頼者本人が、破産審尋(※1)と免責審尋(※2)の2回は裁判所に出向く必要があります。弁護士の場合は、即日面接という代理人弁護士と裁判官が話す場が設けられますが、破産審尋は書面審理で行われるため、出向く必要はありません。
破産審尋は、申立後、破産手続開始決定前に、申立人が破産手続きの要件を満たしているか裁判所が確認するものです。
免責審尋は、裁判所が本人から事情等を聞いて、免責許可を決定するかどうかを判断するものです。弁護士による代理人申立ての場合、書面審理のみで判断されるケースもあります。
東京地裁の管財事件の場合は、次のように手続きが進みます。
申立て→受理→破産審尋→開始決定→管財人打ち合わせ→債権者集会(免責審尋を兼ねる)→免責決定
各裁判所の運用によって異なるものの、東京地方裁判所など、本人申立ての場合に必ず管財事件にする裁判所もあります。管財事件になると、管財人である弁護士の弁護士事務所で打ち合わせを行わなくてはいけませんが、司法書士に依頼する場合、この打ち合わせにも本人のみで対応しなくてはいけません。そのため、管財事件になると、破産審尋、管財人との打ち合わせ、債権者集会(免責審尋を兼ねる)の少なくとも3回は本人が出席する必要がある手続きがあります。司法書士に依頼すると、事前にアドバイスはしてもらえるかもしれませんが、弁護士と同様に、裁判所に代理人として出頭したり、管財人打ち合わせに同行したりすることはできません。
管財事件では、裁判所が選任する管財人の報酬を用意しなければならず、これを管財費用と言います。管財事件には、少額管財と通常管財の二種類があり、少額管財では20万円、通常管財では50万円の管財費用がかかります。
上で述べたように、弁護士に依頼せず、本人申立てをする場合、管財事件にする裁判所がありますし、本人申立ての場合は少額管財ではなく通常管財となる可能性があります。一般的に司法書士は弁護士に比べて費用が安いといえます。しかし、弁護士に依頼する場合は、よほどの事情がない限り、少額管財になるケースがほとんどです。そのため、司法書士に依頼して通常管財になれば、かえって費用がかさむ場合があるので注意しましょう。
弁護士に依頼すれば、自己破産手続きをスムーズに進めることができます。しかし、司法書士に依頼する場合は、いくら司法書士が傍にいるとはいえ、基本的に本人が手続きを行わなくてはならず、本人の手間が多くかかります。負担する費用についても、司法書士に依頼して通常管財になると、弁護士に依頼する場合よりも増えることがあります。もしも自己破産手続きについて悩んでいるのであれば、ホームワンの無料相談をお気軽にご利用ください。
債務整理、特に破産事件を数多く取り扱ってきた。これまでに破産申立を行なった件数は6000件以上。依頼人の利益を考えることを第一に、法律サービスをもっと身近なものにしていくことを目指す。東京弁護士会春秋会の一員として編集に携わった書籍に『実践 訴訟戦術-弁護士はみんな悩んでいる-』などがある。