過払い金の知識
亡くなった方が借金を抱えていた場合、相続人は、相続放棄をして借金を含む一切の遺産を相続しないか、他の遺産と共に借金を相続して返済するか、選ばなくてはいけません。しかし、もしその借金に過払い金が発生していた場合、相続人は、借金だけでなく過払い金も相続することができるのでしょうか?ここでは、相続人は過払い金請求をできるのか、故人の借金に過払い金があるかどうかの調べ方、請求する際の注意点などについて解説します。
相続人は亡くなった方の財産も相続すれば、借金も相続します。資産だけ相続し、借金だけ相続しないということはできないので、資産と借金のどちらが多いかを判断し、借金の方が多ければ相続放棄を検討する必要があります。ただ、一見借金の方が多いように見えても、その借金が古くからの借金で、消費者金融や信販会社のように、高い利息での貸付がかつてあったような場合は、借金ではなく逆に過払い金が発生している場合があります。過払い金も財産ですから、当然相続の対象となります。その場合、相続人が過払い金を請求することが可能です。
亡くなった方の過払い金は、法定相続分に従って当然に分割されることになっています。例えば過払い金が200万円で、妻と子2人が相続した場合、妻が2分の1の100万円、2人の子がそれぞれ4分の1の50万円の過払い金を相続します。もっとも、相続人全員で話し合って、1人が全てを相続することも可能です。
最近テレビやネットで、数分で過払い金があるかどうか分かるかのようなCMが多く見られますが、実際には過去の取引の記録を全て取り寄せ、過払い金が出るかどうか計算する必要があります。しかも、計算上過払い金が出ても、古い取引が一部時効になったり、業者との間で話し合いが成立し過払い金が請求できない状態になっていたりして、実際には過払い金が発生していなかったり、過払い金のごく一部しか請求できないこともあります。
ですから、過払い金があるかどうか知るためには、弁護士等の専門家に相談することが不可欠となります。その上で、過払い金を含め資産が合計でいくらになるか、借金がいくらになるかを調査し、その上で、相続放棄するかどうかを決める必要があります。
相続放棄は、通常、故人が亡くなったことを知ってから3か月(法律上は「熟慮期間」といいます。)以内に家庭裁判所に申し出る(法律上は「申述」といいます。)必要があります。後述するように過払い金の調査には時間がかかることが多く、家庭裁判所に申立をして、さらに1か月~3か月、期間を延長(法律上は「伸長」といいます。)してもらうこともできます。時間との勝負ですので、早めに弁護士等に相談することをお勧めします。
借金している人は、同居している家族にも借金していることを秘密にしていることが多いため、家族も亡くなった方にどんな借金があるか分かりません。業者から督促があれば、それで借金があることが発覚しますが、長期延滞していると督促さえ来ないことがあります。
また、過払い金は完済していた借金から発生することもありますが、そうしたかつてあった借金は督促も来なければ、振込カードも捨てられてしまっていて、過払い金の存在に気づきようがありません。しかし、亡くなった方が今どこに借金があるか、かつてどこで借金していたかを調べるための、いくつかの方法があります。
CIC、JICCといった信用情報機関から個人情報を取り寄せる方法です。消費者金融、信販会社は、顧客との取引のデータを共有し、融資時の審査に利用していますが、こうしたデータを管理・提供しているのがCIC、JICCといった信用情報機関です。相続人であれば信用情報機関に申請し、亡くなった方の取引情報を取得することができます。もっとも、契約終了もしくは完済から5年以上経っている場合、データから消去されてしまうため、信用情報機関の情報だけでは必ずしも十分ではありません。
亡くなった方の預金通帳を調べるやり方です。信販会社の場合、銀行引き落としで返済を受けることが多いため、口座に信販会社の名前があれば、その業者に対する過払い金があるかどうか調べる必要があります。消費者金融の場合、家族に秘密という方が多いため、なかなか通帳に社名が出てきません。ただ、家族にばれないように、プロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)は「PALセンター」、アイフルは「カワキタタイチ(アイフルの元社長の名前)」「カワキタヒトミ」という名前で口座に貸金を振り込むことがあるため、こうした名前が出てきたら、プロミス、アイフルの過払い金を調査する必要があります。
利用明細、領収書、振込カード、督促状等が残っている可能性もあります。
過払い金はキャッシング、ローンといった借金から発生するものであり、クレジットのショッピング代金からは発生しません。 また、利息制限法で定められた年15~20%という上限金利を超える利息を過去に払っていた必要があります。銀行は法律上利息制限法上の上限金利を超えた貸付ができないため、銀行からの借入金からは過払い金は発生しません。 加えて、過払い金は10年で時効になってしまうため、10年以上前に完済していると過払い金は請求できません。
過払い金がどのくらいあるかどうかで、相続放棄をするかどうかを決めたいという方は、3か月(延長した場合はさらに1か月~3か月ほど)以内に過払い金があるかどうかを調査する必要があります。しかし、業者に取引記録を出すよう求めても、すぐに出してくれる訳ではありません。遅い業者だと3か月あるいはそれ以上かかることもあります。また、取引記録を取得できても、業者から契約書類等を取り寄せないと過払い金があるかどうか判断できない場合もあります。そのため、弁護士等に相談するのであれば、極力早くされた方が良いでしょう。
民法は「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、「相続人は、単純承認をしたものとみなす。」と定め、その後は相続放棄ができなくなるとしています。過払い金を受け取らなくても請求しただけで単純承認をしたとみなされ、相続放棄ができなくなってしまうため、過払い金を請求するかどうかは慎重に決める必要があります。
こうしたリスクを避ける方法として「限定承認」という制度があります。限定承認とは、相続人が、プラス分の遺産を限度として、亡くなった方人の借金を支払うことを条件に、相続を承認することをいいます。すなわち限定承認をすれば、実際過払い金により遺産全体がプラスになれば相続し、遺産全体がマイナスになれば、マイナス分は相続しなくて済むのです。限定承認について詳しくお知りになりたい方はこちらをご参照ください。
限定承認とは?相続放棄との違いやメリットとデメリットを解説|弁護士法人 法律事務所ホームワン (home-one.jp)
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