最高裁判決の要点と解説

業者は適法な契約書、領収書を発行していたことを立証しないと、原則として過払金に利息を付けて返さなければならない

平成19年7月13日最高裁判所第三小法廷判決

要点

業者が借主に対して、2回にわたって証書貸付を行い、その返済中、支払期限を徒過し、期限の利益を喪失したが、その後3回目の貸付を行ったという事案です。

貸金業者が、借主に、法律が定めた事項を全て記載した契約書および領収証を速やかに(契約書の場合)ないし直ちに(領収証の場合)渡さない限り、グレーゾーン金利をとることは許されず、業者は悪意の受益者と推定されます。

過払金が生じると分かって超過利息を受け取っていた場合、業者は、民法704条にいうところの「悪意の受益者」となり、過払金に利息をつけて返さなければなりません。

判決

「貸金業者が借主に対して制限利率を超過した約定利率で貸付けを行った場合、貸金業者は、貸金業法43条1項が適用される場合に限り、制限超過部分を有効な利息の債務の弁済として受領することができるにとどまり、同規定の適用がない場合には、制限超過部分は、貸付金の残元本があればこれに充当され、残元本が完済になった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識しているものというべきである。
そうすると、貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。」

解説

貸金業法は、貸金業者は借主に対して、契約書は、契約締結後「速やかに」(17条)、領収証は、返済金を受領後「直ちに」(18条)交付しなければならないと定めています。
その内容についても細かく定めており、記載すべきことが一点でも漏れてはいけないことになっています。

業者はこうした決まりを守って、初めて利息制限法を超える金利(グレーゾーン金利)を取得することができるのです。

ですから、こうした書面を交付したことが証明できない場合、貸金業者は、過払金と知っていて弁済を受領したものと推定されます(これを「悪意の受益者」といいます)。

業者は、過去にこうした書面を発行していたことを一つ一つ証明するのは大変なので、
「ATMが利用明細を発行しないなどということはありえない。したがって、過去にさかのぼって当時発行していた利用明細が法律要件を満たしていたことを証明すれば、当該借主もATMで適法な書面の交付を受けたことになる。」と主張することがよくあります。

しかし、現状、殆どの裁判所が業者のこのような主張を認めていません。

そして、悪意の受益者とされると、「過払金と知っていて受け取っていた」のですから、単に受け取った過払金をそのまま返しただけでは足りず、利息も付けて返さなければならないこととされています。

参考条文

民法第704条

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合においてなお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

リボルビング払いを定める基本契約がある場合でも、17条書面には返済期間・返済回数と返済金額に準じた記載が必要となる

代表弁護士中原俊明
中原 俊明法律事務所ホームワン 代表弁護士

東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。

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