最高裁判決の要点と解説
平成24年6月29日最高裁判所第二小法廷判決
クラヴィスは元はSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス、以下「SMBC」といいます)の子会社でした。
消費者金融業界が行き詰まりを見せる中、SMBCは、子会社クラヴィスの貸金事業を自社で引き継ぎ、クラヴィスの貸金業を清算させるという、経営統合計画を立て、平成19年6月、SMBCはクラヴィスと基本合意書を締結しました。
同基本合意に基づき、SMBCはクラヴィス顧客にクラヴィス債務残高と同額を貸し付け、同顧客にクラヴィス債務を完済させ、これら旧クラヴィス顧客を自社の顧客にしました(当事務所では「契約切替顧客」と呼んでいます)。
しかし、諸々の事情から契約から漏れたクラヴィス顧客については、クラヴィスから債権を買い取ることになりました(当事務所では「債権譲渡顧客」と呼んでいます)。
最高裁は、契約切替顧客がクラヴィスに対して有していた過払金については、SMBCも連帯して支払義務を負うものとしましたが、債権譲渡顧客がクラヴィスに対して有していた過払金については、SMBCも連帯して支払い義務を負わないものとしました。
その後者の判決がこの判決です。
被上告人SMBCは、国内の消費者金融子会社を再編することを目的として、平成19年6月18日、完全子会社クラヴィス(旧ぷらっと、クオークローン)との間で基本合意書を取り交わし、クラヴィスが顧客に対して有する貸金債権をSMBCに移行し、クラヴィスの貸金業を廃止することとしました。
SMBCはクラヴィス顧客の一部と基本契約を締結し、自社との契約に切り替えたが、他の顧客については、債権譲渡基本契約(本件基本契約)に基づき、平成19年10月16日付でクラヴィスの顧客に対する貸付債権がSMBCに一括譲渡されました。
本件訴訟原告は債権譲渡対象となった顧客でした。
同契約にはクラヴィスが顧客に対して負担する過払金返還債務をSMBCが併存的に引き受ける旨の条項(本件債務引受条項)がありました。
しかし平成20年12月15日、本件基本契約のうち本件債務引受条項を変更し、過払金等返還債務につき、クラヴィスのみが負担し、SMBCはこれを負担しない旨の契約(本件変更契約)を締結しました。
最高裁判決は「本件債権譲渡基本契約中の本件債務引受条項は、譲渡債権に係るクラヴィスの顧客を第三者とする第三者のためにする契約の性質を有するところ、本件変更契約の締結時までに、上告人(借主)は、被上告人(SMBC)に対し、本件譲渡に係る通知に従い弁済をした以外には、第1取引に係る約定残債権につき特段の行為をしておらず、上記弁済をしたことをもって、本件債務引受条項に係る受益の意思表示をしたものとみる余地はない。そうすると、本件債務引受条項は、上告人(借主)が受益の意思表示をする前にその効力を失ったこととなり、被上告人(SMBC)が本件債務引受条項に基づき上記過払金等返還債務を引き受けたということはできない。」としました。
クラヴィス顧客のうちには、SMBCとの契約切替をした者(契約切替顧客)と、契約切替に至らず債権譲渡された者(債権譲渡顧客)とがいます。
SMBCはクラヴィスとの間で、何れの顧客の債務を引き受ける約束をしました。これは法律上「第三者のためにする契約」と呼ばれるものであり、第三者たる旧クラヴィス顧客は、上記契約の当事者ではないため、同契約における利益(SMBCに対する過払金を請求権)を当然には得ることができず、その利益を受ける旨の「受益の意思表示」をして初めて同利益(SMBCに対する過払金返還請求権)を取得できるのです。
契約切替顧客は、SMBCと基本契約を締結する際、クラヴィスとの間で生じた紛争の窓口をSMBCが務めることを承諾する書面を作成しているため、これが受益の意思表示となりました。
しかし債権譲渡顧客は、このような承諾書に署名をすることを求められることがないまま=受益の意思表示をする機会がないまま、クラヴィスとSMBCとの間で債務引受が撤回されてしまったので、結局SMBCに対する過払金請求権を取得する機会を失ってしまったのです。
旧クラヴィス顧客が、プロミスとの契約に切り替えた場合、プロミスはクラヴィスの過払金債務についても支払い義務を負う
東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。
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