債務整理の知識
特定調停とは、「債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)の経済的再生を図るため、特定債務者が負っている金銭債務に係る利害関係の調整を行うことを目的とする手続」です。
1999年に成立した「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(以下「法」といいます)」に基づく制度です。
債務の返済ができなくなるおそれのある債務者(特定債務者)であることが必要です。
では、奥さんに秘密で消費者金融3社から借りていて、毎月小遣いから返済を続けていくのが大変という方が利用できるかと言うと、難しいかもしれません。こういう人が申立てをすると「奥さんの収入はいくらですか、奥さんとは相談されましたか、相談されてから来てください」で終わってしまうからです。そのとき「妻に言ったら離婚される」と言っても受け付けてもらえません。
高所得者の方も利用するのは難しいでしょう。高所得者の方は、高い家賃の家に住み、食費もそれなりの額を使う等、生活費が高めです。「引っ越しも含め、そういう部分を切り詰めれば、借金は払えるでしょう」ということになっているからです。
月収20万円、家賃5万円と言う人でも、独身で、生命保険に2万円払っているというと、「保険を共済にすればいいでしょう。これじゃ債権者を説得できないですよ」と言われてしまいます。
むしろ、ある程度収入のある人は、個人再生手続をとったほうが無難です。
特定調停は、簡易裁判所で行なわれます。
特定調停も調停手続の一つですから、相手方(債権者)の住所地の裁判所に申し立てることが原則です。しかし多くの場合、地元の裁判所で申立てをすることが可能ですので、事前に裁判所にお尋ねになったほうがいいでしょう。
申立書は裁判所にひな型が置いてあります。ひな型は裁判所によって異なりますし、添付書類も裁判所によって違いますので、必ず地元の裁判所に行って書類を貰ってきてください。
ある裁判所は、財産状況の明細書や、収入・支出の分かるもの(月単位の家計表、給与明細、家計簿、通帳のコピー等)、借入内容が分かるもの(契約書、請求書などのコピー)、返済の分かるもの(領収証)等、添付資料も多岐にわたっています。
申立書類を作成する際、重要なのは、具体的な数字を正確に書き、そのための資料も揃えることです。裁判所は「この人が本当にギリギリの状態にあるのだろうか」を見るわけですから、車のローン3万円、保険料1万円などと申告したら、もっと正確に書きなさいと言われてしまいます。毎月の光熱費も通帳の引き落し額を見て、その平均的な金額を書くなど、正確かつ具体的な記載が必要になります。
相手方1社について500円分の収入印紙が必要です。例えば、相手方が5社のときは、2500円となります。
そのほか、郵便切手を納付する必要があります。納付すべき切手の種類、数は裁判所によって異なります。ちなみに、東京簡易裁判所の場合、相手方1社について430円分が必要で、手続きの進行によっては追加で納付する必要があります。
業者から給料を差し押さえられている場合、債務者は、特定調停が終了するまでの間、民事執行手続の停止※を命ずるよう、裁判所に申し立てることができます(法7条)。
※裁判所が債権者に対し、債務者の給料や銀行預金を差し押さえることを止めさせること。
特定調停の申立てがあると、裁判所から相手方(業者)に、申立書等を郵送します。その際、相手方に、金銭消費貸借契約書のコピー、取引履歴に基づく利息制限法所定の制限利率による引き直し計算書の提出を求めます。
調停期日の進め方は、通常は、最初に申立人から事情を聴取する期日(①事情聴取期日)を開き、その後に相手方と債務額の確定や返済方法を調整する期日(②調整期日)を開きます。
①事情聴取期日では、申立人だけ裁判所に行き、調停委員が申立人から、生活状況や収入、今後の返済方法などについて聴取します。これは、申立人が特定債務者に当たるか否かを検討するとともに、相手を説得する材料を集めるためです。
②調整期日には、裁判所と相手方との間で返済方法などを調整がされますが、業者が裁判所に出てくるのはまれで、大概、調停委員と業者とが電話でやりとりするのが普通です。調停委員は、業者が提出した債権額計算書をもとに、申立人との総債務額を確定し、申立人が返済可能な弁済計画案を立てて、相手方の意見を聴きながら、分割返済の合意を目指します。
調整の結果、合意に達した場合、相手が出席している場合は調停調書を作り、相手が電話での参加の場合は、17条決定といい、合意内容がそのまま裁判所の決定となります。
双方の折り合いがつかないときは、不調といってそのまま手続きが終了する場合もあれば、裁判所が相当と考える分割返済計画を17条決定する場合があります。後者の場合、14日以内に相手方が異議を申し出ると同決定は失効しますが、その間に異議を述べないと確定判決と同様の効力を生じます。
以上の手続きが終了するまでに、通常、申立てからおおよそ2か月程度の期間がかかり、申立人は2回程度裁判所に出向くことになります。
特定調停は、話し合いの後に返済を行なっていくことから任意整理に近いです。
東京都出身、1987年 弁護士登録(東京弁護士会所属)、ホームワンの代表弁護士 中原です。一件のご相談が、お客さまにとっては一生に一度きりのものだと知っています。お客様の信頼を得て、ご納得いただける解決の道を見つけたい。それがホームワンの願いです。法律事務所ホームワンでは過払い金・借金問題に関する相談を受け付けています。
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