自己破産を考えていても、会社に知られてしまうことが不安で、手続きをためらっている方もいらっしゃると思います。自己破産は、基本的に会社に知られてしまうことはありません。ただし、特定のケースに該当すると知られてしまうこともあります。自己破産を弁護士に依頼する前に、どのようなケースで会社に知られてしまうか把握しておくことも大事です。あわせて、自己破産すると仕事にどのような影響があるかも知っておきましょう。
自己破産をしても、裁判所から勤務先に連絡が行くようなことはなく、基本的に会社に知られてしまうことはありません。破産をすると国が発行している新聞とも言える官報に掲載されますが、一般の人で官報をまめにチェックをしている人は少なく、会社に知られてしまう可能性は低いといえます。
かつては破産すると、その旨が本籍地の市町村役場に通知が行くことになっていました。本人以外には開示されませんが、地方の方だと役場に勤めている方もいて、破産をためらう方もいました。破産法改正(平成17年施行)に伴う通達により、現在は破産したからといって、ただちに本籍地の役場に連絡が行くことはなく、免責が不許可になった場合のみ、その旨の通知が行くことになりました。免責不許可になる場合を除いて、役場に連絡が行くことはありません。
基本的には会社に知られてしまうことはありませんが、以下のケースでは知られてしまうこともあります。そのため、具体的にどのようなケースで知られてしまうか、自己破産する前に理解しておくことも重要です。
勤務先の会社から借入をしている状態で自己破産をする場合、勤務先の会社も債権者として裁判所に届け出します。その結果、裁判所から債権者である勤務先に手続きに関する通知が届きます。一部の借入先を債権者として含めないことはできません。
官報とは、国が発行している新聞のようなものですが、法律や政令・条約を国民に知らせる役割を持っています。掲載される内容は、政府や各省庁の決定事項や人事異動、国家試験に関する事項や競争入札など国に関わる様々な情報で、その中に、自己破産や個人再生の情報も含まれています。官報は行政機関の休日を除いて毎日発行されています。
自己破産をすると、官報に破産をした事実や名前・住所などが掲載されますが、勤務先が定期的に官報をチェックしているような会社でない限り、自分の周りの一般の方が官報を見ることはまず考えられません。現実的には、官報に自己破産をした事実が掲載されたとしても、そのことから自分の周囲の方に自己破産を知られてしまう可能性は低いといえるでしょう。
借金を滞納している状態を続けていると、債権者から裁判を起こされて給与を差押えられてしまう場合があります。その場合、裁判所が会社に「債権差押命令」を送付するので、あなたが借金をしていることは会社に知られてしまいます。また、給与が差押えられてしまうと、その一部を受け取ることができなくなります。このようなケースでは、給与差押えを解除するために、自己破産を検討することになります。
破産手続の前後にかかわらず、給与はそのまま受け取れます。また、差押えを受けていた場合でも、免責確定後、必要な手続きをとることで全額受け取れるようになります。
破産したからといって仕事を辞めなければならないということはなく、仕事はそのまま続けられます。一定の資格を使う仕事は、手続期間中に就業制限がかかる場合もありますが、免責確定後は復権しますので、また同じように働くことができます。制限を受ける資格の一例は、次の通りです。
弁護士・公認会計士・生命保険募集人・宅地建物取引主任者・警備員など
また、もしなんらかの事情で勤務先に破産したことが知られたとしても、勤務先に借入れがあった場合など、特別な事情がある場合を除いては、破産したことだけを理由に解雇することは原則認められません。
債務整理、特に破産事件を数多く取り扱ってきた。これまでに破産申立を行なった件数は6000件以上。依頼人の利益を考えることを第一に、法律サービスをもっと身近なものにしていくことを目指す。東京弁護士会春秋会の一員として編集に携わった書籍に『実践 訴訟戦術-弁護士はみんな悩んでいる-』などがある。